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深夜2時、廊下の真ん中で猫が鳴いている。子猫のころのミャアではなく、アオーンと長く尾を引く声で、ドアを閉めていてもはっきり聞こえる。行ってみても、ごはんでもトイレでもない。これが11歳を過ぎたあたりから始まったなら、しつけの話ではありません。
【至急】次に当てはまるなら、朝を待たずに夜間救急へ電話してください
- 悲鳴のように叫んで後ろ足を引きずる、立てない、後ろ足や肉球が冷たい(血のかたまりが血管に詰まっている可能性。強い痛みを伴うので、電話をしてから、後ろ足に触れずそのまま運んでください)
- トイレに何度も出入りする、いきんで唸る、尿がほとんど出ていない(尿道が詰まっている可能性。とくにオス猫では命に関わります)
- 口を開けて呼吸している、呼吸が速く浅い
- けいれん、同じ方向にぐるぐる回る、意識がもうろうとしている
- お腹を触られるのを激しく嫌がる、体を丸めて動かない
- 繰り返し吐いて、水を飲んでも吐いてしまう
- ぐったりして反応が鈍い、呼びかけへの反応が落ちている
この記事の続きは、そのあとで大丈夫です。
どれにも当てはまらなかったなら、今夜すぐに動く必要はありません。原因を調べるのは、明日以降で間に合います。
まず結論:11歳以降に始まった夜鳴きは、しつけより先に体を調べる
11歳を過ぎてから急に始まった夜鳴きは、甲状腺機能亢進症・高血圧・体の痛みなどが背景に隠れていることがあり、行動の問題として扱う前に動物病院で調べる対象になります。若い頃からの要求鳴きとは、切り分けて考えてください。
| 考えられる原因 | 夜鳴き以外に出るサイン | 確かめる方法 |
|---|---|---|
| 甲状腺機能亢進症 | 食べているのに痩せる、多飲多尿、落ち着きがない、嘔吐や下痢 | 血液検査(甲状腺ホルモン) |
| 糖尿病 | 食べているのに痩せる、多飲多尿、かかとを着けて歩く、元気消失 | 血液検査(血糖・フルクトサミン)、尿検査 |
| 高血圧 | 家具にぶつかる、瞳孔が開いたまま、鼻血、ふらつき | 血圧測定、眼底の確認 |
| 慢性腎臓病 | 多飲多尿、体重減少、食欲のむら、口臭、便秘 | 血液検査、尿検査(尿比重) |
| 痛み(変形性関節症など) | 高い場所に登らない、触られるのを嫌がる、トイレを外す | 触診、レントゲン |
| 認知機能不全症候群 | 昼夜の逆転、部屋の隅で立ち尽くす、呼んでも反応が薄い | 血液検査などで他の病気を除外したうえで判断 |
| 難聴 | 物音に反応しない、声が極端に大きくなる | 耳の中の診察、視界の外から音を出す反応の確認 |
難聴と認知機能不全をのぞく5つは、治療によって夜鳴きそのものが軽くなることがあります。だから、環境を整えるのは受診のあとです。
甲状腺機能亢進症:食べているのに痩せていく
甲状腺機能亢進症は10歳以上の猫に多い内分泌の病気で、食欲があるのに体重が落ち、夜中に落ち着きなく歩き回って鳴くという形で表れます。ホルモンが過剰に出て、安静にしていても心拍が上がったままになります。
飼い主から見ると、最初は「よく食べるようになって元気」に映ります。半年ぶりに抱き上げて軽さに驚く、というのがよくある気づき方です。一方で、少数ながら食欲が落ちてぐったりして見えるタイプもあります。よく食べるかどうかにかかわらず、体重が落ちていれば検査の対象です。
血液検査(甲状腺ホルモン)で調べますが、1回の検査で基準値内でも否定しきれない場合があり、時期をおいた再検査が必要になることがあります。「T4は正常でした」の一言で終わりにせず、症状が続くなら再検査を相談してください。
治療には飲み薬、ヨウ素を制限した療法食(ほかのフードやおやつを一切与えない管理が前提です)、外科手術、放射性ヨウ素を使う治療(実施できる施設は限られます)などがあり、猫の状態や併発している病気によって選び方が変わります。治療が始まると数週間で活動量が落ち着き、夜の声が減る猫がいます。夜鳴きのために調べたら見つかった、という順番も珍しくありません。なお治療を始めると、それまで隠れていた腎臓の問題が表に出てくることがあるとされ、治療後も定期的な血液検査が必要になります。
「食べているのに痩せる、水をよく飲む」は、糖尿病でもほぼ同じように見えます。糖尿病の猫は夜中に何度も水とトイレを往復し、そのうちに落ち着かなくなって鳴くことがあります。後ろ足のかかとを床に着けて歩くようになったら、糖尿病による神経の変化が疑われます。どちらの病気かは血液検査と尿検査で分かれるので、症状だけで決めつけないでください。
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壁にぶつかるようになったら、その日のうちに
瞳孔が開いたまま戻らない、物にぶつかる、急に見えていない——どれか1つでも当てはまれば、その日のうちに動物病院へ連絡してください。高血圧による網膜剥離は、早い段階で血圧を下げられれば視力が残ることがあります。戻らないことも少なくありませんが、可能性を残せるのは早い受診だけです。
高血圧は慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症に続いて起こることが多く、傷むのは目だけではありません。脳に及べばけいれんやふらつき、鼻血として出ることもあります。血圧測定は前足か尻尾にカフを巻いて数分で終わりますが、健康診断の項目に入っていない病院もあるため、10歳を過ぎたら「血圧も測ってほしい」と伝えておくとよいでしょう。なお猫は診察室で緊張して数値が上がりやすく、1回の高値では診断されないのが通例です。
慢性腎臓病:夜中に水を飲みに行き、そのまま鳴く
慢性腎臓病の老猫は夜間に何度も水を飲みに行き、トイレへ往復するうちに落ち着かなくなって鳴くことがあるため、多飲多尿と体重減少が重なっていれば血液検査と尿検査を受けてください。水入れの音が夜中に何度も聞こえるようになった、というのがよくある気づき方です。
腎臓病の猫が夜につらいのは、腎臓そのものだけが理由ではありません。貧血で息が上がる、血液中のカリウムが下がって首がうなだれる、吐き気が続く。どれも夜に落ち着かなくなる理由になります。歯ぐきや鼻が白っぽいときは貧血の可能性があるので、その一言が診断を早めます。なお血液検査だけだと初期を取り逃がすことがあります。尿検査もあわせて希望してください。腎臓の数値は、早く分かるほど打てる手が増えます。
登らなくなったのは、老化ではなく痛みかもしれません
変形性関節症は老猫でありふれた病気で、12歳を過ぎるとレントゲンで関節の変化が見つかることが多い一方、飼い主が痛みに気づいている例はずっと少なくなります。猫は犬ほどはっきり足を引きずらないため、痛みが「やらなくなる」という形でしか出てこないのです。
家で分かる手がかりは、動きの変化です。窓辺やタンスの上に登らなくなった、階段を一段ずつ止まりながら上がる、トイレの縁をまたぎきれずに外してしまう、ブラッシングで背中や腰を触ると嫌がる。夜に鳴くのは、じっとしていると痛むからかもしれません。レントゲンで異常がなくても痛みがないとは限らないので、動きの変化はそのまま伝えてください。
痛みは獣医師のもとで管理できることが多いものです。猫に使える鎮痛の選択肢は増えていて、動物用に承認された飲み薬や注射薬があります(いずれも診察と処方が必要です)。診察のときに「痛み止めの選択肢はありますか」と聞いてみてください。腎臓の数値や持病もあわせて伝えると、その猫に合う選択肢を検討してもらえます。
家では、段差を減らす、寝床を暖かくする、水飲み場を低い位置に移すといった対応が効きます。湯たんぽやペットヒーターを使うなら、猫が自分で離れられる置き方にしてください。
太り気味なら減量も効きますが、痩せてきている猫には当てはまりません。減量が必要かどうかは、必ず獣医師に確認してください。
【禁止】人用の解熱鎮痛薬は絶対に使わないでください。犬の薬も同じです
とくにアセトアミノフェン(解熱鎮痛薬に広く含まれます)は、猫ではごく少量でも命に関わる中毒を起こします。イブプロフェンやアスピリンも同様に危険です。犬に処方された痛み止めも、猫には使えません。すでに与えてしまった、あるいは猫がなめた可能性がある場合は、症状がなくてもすぐに動物病院へ連絡してください。
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認知機能不全症候群:時間と場所が分からなくなる
認知機能不全症候群による夜鳴きは11歳以降に増え、深夜から明け方に何もない場所で遠くを見ながら鳴くのが特徴で、他の病気を除外したうえで診断します。認知機能不全症候群とは、加齢によって脳の働きが落ち、見当識や睡眠のリズム、家族との関わり方に変化が出る状態のことです。
声だけで原因を見分けることはできませんが、鳴き方には傾向があります。同じ高さ・同じ長さの声を、決まった間隔をおいて繰り返す。呼びかけても反応が鈍く、近づくとふっと我に返って歩き出す。要求ではないので、抱いてもごはんを出しても止まりません。ほかに、昼夜が逆転する、覚えていたはずのトイレの場所を間違える、狭いところに入り込んで出られなくなる、といった変化が重なります。
診断の順番が大事な理由
「歳だから認知症でしょう」で止めてしまうと、治療できる甲状腺機能亢進症や高血圧が、見つからないまま残ります。先に環境を整えて、あとから調べる、という順番はありません。まず調べ、見つからなければ認知機能の変化として付き合い方を考えます。
脳の腫瘍や貧血、肝臓の病気でも同じような変化が出ることがあります。歯ぐきの色が白っぽい、同じ方向にぐるぐる回る、けいれんがある。こうした場合は認知機能の問題と決めつけず、その旨を獣医師に伝えてください。
認知機能の低下だと分かったあとも、打つ手がないわけではありません。食事やサプリメントの見直し、日中の刺激と夜の環境の整え方、不安が強い場合の処方薬など、獣医師と相談できる選択肢があります。行動の診療を専門にする病院もあります。
耳が遠くなると、声は大きくなる
耳が遠くなった猫は自分の声が聞こえないため声が大きくなり、寝ているときに近づいても起きない状態が続くなら、振動や視覚で合図する暮らしに切り替えます。ただし加齢による低下と決めつける前に、まず耳の中を診てもらってください。耳垢のつまりや外耳炎、耳の中のできものなど、治療で改善しうる原因もあります。
家庭でも見当はつけられます。猫の視界に入らない位置から、いつも反応していた音、フードの袋を振る、缶を開けるといった音を出してみて、視界に入ってから気づくかどうかを見ます。
そのうえでの暮らしの調整です。後ろから急に触ると驚くので床を軽く踏んで振動で気づかせる、夜は寝室のドアを開けて姿が見える位置に寝床を置く。声で確認できないぶん、目で確認できるようにするのが基本です。
検査で異常がなかったときの、環境の見直し
検査で異常がなかった場合は、夕方の遊び、就寝直前の給餌、常夜灯、寝床とトイレの動線という4つを、1つずつ2週間単位で試します。同時に全部変えると、何が効いたのか分からなくなります。
試す価値がある4つ
- 夕方に遊ぶ:猫じゃらしを、捕まえられる速さで。5分を目標にしますが、2分で寝そべったらそこで終わりで構いません
- 最後の食事を寝る直前に:1日の総量は変えず、配分だけ後ろにずらします。空腹で目が覚める分が減ります
- 常夜灯をつける:視力が落ちた猫は暗闇で不安になります。廊下に足元灯を1つ置くだけで変わることがあります
- 寝床とトイレを寝室の近くに:姿が見える距離にいると鳴きやむ猫がいて、夜中に遠くまで歩く負担も減ります。寝室に入った直後から鳴きはじめる場合は、分離不安が背景にあるかもしれません
※持病があり投薬中・療法食中の猫は、給餌のタイミングや量を変える前に必ずかかりつけに確認してください。

【至急】インスリンを使っている猫が、ふらつく・ぐったりする・けいれんする
低血糖の可能性があります。夜間でもすぐに動物病院へ連絡してください。給餌の時間や量を変えたあとは、とくに注意が必要です。
途中で新しい症状が出たら、2週間を待たずに中断して受診してください。食べない、吐く、尿が出ていない、歩き方が急に変わった、鳴き方が明らかに激しくなった。いずれも様子見の対象外です。
やってはいけないこと
夜が続くと、こちらの余裕もなくなります。それでも、次の3つだけは避けてください。いずれも不安を強めるか、原因の発見を遅らせます。
- 叱る、大きな音を出す:不安が原因の場合、鳴き方が悪化します。認知機能が落ちた猫には、叱られた理由も伝わりません
- ドアを閉めて別室に隔離する:姿が見えない不安から、さらに鳴くことが多くなります
- 「要求鳴きだから無視」で通す:若い猫には有効な方法です。ただし若い猫でも、急に始まった鳴き方の変化は体調の確認が先。まして老猫の新しい夜鳴きに当てはめると、治療できる病気を見落とします
自分の睡眠は、守ってかまいません。耳栓やホワイトノイズで眠りを確保するのは、猫を無視することとは違います。ただし猫の様子を一度は見に行ける状態にしておいてください。何日も眠れていないと、翌日に病院へ電話する判断力も落ちます。

受診の目安:夜間救急・当日中・1週間以内
上から順に確認してください。1つでも当てはまったら、その段階の対応をとります。
| 緊急度 | 当てはまる状態 |
|---|---|
| 今すぐ(夜間でも) | 次のいずれか。後ろ足の麻痺と冷感、尿が出ない、開口呼吸や浅く速い呼吸、けいれん・旋回、腹部の激痛、ぐったりして反応が鈍い |
| 当日中 | 瞳孔が開いたまま戻らない/物にぶつかる/急に見えていない/鼻血/歯ぐきが白っぽい/ふらつく・よろける/3日以上便が出ない/丸1日以上食べていない |
| 1週間以内 | ここ1〜3か月で急に鳴きはじめた/声の大きさが変わった/体重が落ちた/食欲が増えたのに痩せる/水を飲む量が増えた/トイレを外す/昼夜が逆転している |
飲水量については、ドライフード中心の猫で1日に体重1kgあたり50mlを超える日が続けば多飲の疑い、100mlを超えれば明らかな多飲です(4kgの猫なら200mlと400ml)。ウェットフード中心の猫は食事から水を摂るぶん飲水量が少なくなるので、絶対量より「前より明らかに増えた」という変化のほうが手がかりになります。測るときは、計量カップで入れた量から翌日の残りを引きます。多頭飼育で測れない場合は、水を足す回数の変化を記録してください。
なお猫は、数日食べない状態が続くと肝臓に脂肪が溜まって別の病気を起こすことがあるとされています。丸1日食べていなければ当日中に、2日以上まったく口にしていなければ夜間でも連絡してください。
動物病院で伝える4つのこと
診察室で鳴かない猫のかわりに、鳴いている様子の動画、時間帯と回数、半年前からの体重の推移、1日の飲水量と食事量の4つが診断の材料になります。
- 動画:鳴いている様子を10秒。長くても20秒あれば十分です。姿勢と場所が映っていると判断材料になります
- 時間帯と回数:何時ごろ、1晩に何回、何日続いているか
- 体重の推移:半年前と比べてどうか。数字がなければ当日測って基準にします
- 飲水量と食事量:1日分を測った日が1日でもあれば足ります
こちらから頼むなら、血液検査(甲状腺ホルモンを含む)・尿検査・血圧測定の3つです。血圧は項目から漏れやすいので、必ず口に出してください。
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よくある質問
老猫の夜鳴きは薬で止められますか?
原因によります。甲状腺機能亢進症や高血圧、痛みが背景なら、その治療で数週間のうちに軽くなることがあります。認知機能の低下によるものは長く付き合うことになりますが、不安が強い場合に動物病院で処方薬やサプリメントが検討されることもあります。市販薬や人用の薬を自己判断で与えるのは絶対に避けてください。
検査費用は事前に分かりますか?
分かります。動物病院の料金は病院ごとに決められるため一律ではありませんが、予約の電話で「甲状腺を含む血液検査と尿検査、血圧測定でいくらになりますか」と具体的に聞けば、来院前に総額を教えてもらえます。項目をまとめたシニア健診コースを用意している病院もあります。
老猫を病院に連れて行くのはストレスになりませんか?
移動の負担はあります。それでも、原因の分からない夜鳴きが何週間も続く負担のほうが、猫にとっても飼い主にとっても大きくなりがちです。負担を減らすには、キャリーを普段から部屋に出して寝床にしておく、待合室で待たずに車で待てるか相談する、往診に対応している病院を探すといった方法があります。ただし開口呼吸があるときは移動自体が危険なので、動かす前に必ず電話してください。
まとめ
歳を取ってから始まった夜鳴きは、まず調べる。環境を整えるのはそのあとです。
今夜また鳴いたら、廊下に出る前にスマホで10秒だけ動画を撮ってください。診察室で再現できないものが、そこには映っています。
この記事について
ふぁみもん編集部が、公開されている一般的な情報をもとにまとめたもので、獣医師の監修は受けていません。個々の猫の診断や治療に代わるものではありません。持病のある猫、投薬中の猫については、必ずかかりつけの動物病院の指示を優先してください。
高齢猫の認知機能の変化と行動の評価は AAFP「Feline Senior Care Guidelines」(2009年)、ライフステージ区分と健康診断の頻度は AAHA/AAFP「Feline Life Stage Guidelines」(2021年改訂)、水分要求量の考え方は WSAVA「Global Nutrition Guidelines」(いずれも英語)を参照しています。多飲の目安(50〜100ml/kg)は、小動物内科で一般に用いられている値です。
公開:2026年8月24日/最終更新:2026年8月30日(内容は更新時点の情報です)


